「37」の奇跡──赤坂で、憧れの人に会う
- Ryusaku Chijiwa

- 4 日前
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更新日:6 時間前
2025年12月12日
中学時代からカシオペア周辺のフュージョンはかじっていたが自分の音楽の趣味にジャズが入り込む契機となったのは【ライブ・アンダー・ザ・スカイ86】のテレビ放送を観て衝撃を受けたこと。JT(日本たばこ)がスポンサーとなったメディアミックス展開のバブルを象徴するかのような華やかさに心を動かされ、エレクトリックバンドで見たデイブ・ウェックルは新しい時代のドラムヒーローだとの思いも手伝い、翌年はよみうりランドEASTの観客席で楽しんだ(坂本龍一がSXLで参加するという目玉イベントに飛びついたところも大だったが、教授は突発性難聴で不参加)。JTが絡むFMラジオ番組の「セレクト・ジャズ・ワークショップ」を聴き、スタンダードをランキング形式で紹介する関連本も購入して読み耽り、ミュージシャンや作家、芸能人などが執筆する連載広告はスクラップにして蒐集に熱中した(→昨年SNSに連続でアップしています)。
その流れでライブ番組「セレクト・ライブ・イン・ジャズ」がスタートしたのは87年の深夜帯、野球中継のないオフシーズンは閑散期、日本テレビとしても好都合のプログラムだったようだ。邦人ジャズに対する偏見を持つ外タレかぶれのマニアが多い中で自分が全く抵抗もなく受け容れられたのはこの番組のお陰でもあった(翌年88年も同時期に放送されたが結局2シーズンで終了)。自分も趣味でドラムを叩くので毎回どうしても注目はドラマーに向けられ、ネイティブ・サンで知られる村上寛さんのドラムの切れ味の鋭さ、ハナモゲラの小山彰太さんはスネアの音が素晴らしかったこと、古澤良治郎さんのロックを感じるフルショットのプレイ、トコさんこと日野元彦さんの情熱的なソロなど各人の持つ魅力に触れた。出来る限り録画をして楽しんだが最もリピートしたのは初年度の益田幹夫カルテット(「スモーキン・ナイト」)、二年目の浜田均(「浜田均グッド・バイブス」)で、前者はボサノバやラテンの風味が強く後者はヴァイブラフォンが主役のジャズでいずれもビギナーの自分には親しみやすくそれが却って強く惹かれるところになったのだろう。天才少年ドラマーとして出現した奥平真吾さんのソロは圧巻だったしパーカッションの横山達治さんはトークも楽しかった。いつか生で聴きに行きたいな・・・そんな思いを持ちながら老舗のジャズクラブというのはやはり敷居が高いような気がして機会を逸し、あっという間に自分は五十代の半ばを過ぎてしまった。益田幹夫さんは多発性硬化症を患い90年代末には表舞台から姿を消された(作家の木村二郎氏のブログには2023年9月28日に逝去されたとの記述がある)。一方のハマキンさんこと浜田均さんはまだ現役、JPC(ジャパンパーカッションセンター)をはじめ各地の音楽大学でマスタークラスを持つなど後進の指導にもあたっておられる。深夜番組で見た前後にも「ALL JAPAN JAZZ AID」や「よこすかジャズドリームス」のテレビ放映で目にしており、何てカッコいいヴァイブなんだろう!と思っていたのだ。よし!ライブで浜田さんの演奏を聴こう──とスケジュールをチェックし始めたのが三年ほど前、何事においてもノロマな自分がやっと足を運ぶに至ったのが今回というわけなのだった。
公演はハマキンさんがこの数年参加しておられるリーダーユニット「玉響(たまゆら)」で、同郷北海道出身のヴォーカル近藤ひろみ嬢をフィーチャリングしたカルテット。ヴァイブの目の前の席に陣取って憧れの人の演奏を楽しみつつ様々な想いが去来し、胸が一杯になる。浜田さんのオリジナルも絡めてタンゴやボサノヴァ、ピアソラにジブリナンバー、美空ひばりに服部良一、武満徹の楽曲と実に多彩な構成。二部構成の中入りに近藤さんからお声掛けを頂いたので来場に至る顛末を手短に話し「ヒーローに会いに来たんです」と伝えるとご本人を呼んでくれた。「お会いするまでに37年もかかってしまいました」「あはは、ダメじゃないそれー(笑)」すごい、憧れのご本人と会話している!終演後はステージに上げて頂いての記念撮影までしていただき、感激しつつも恐縮しきりで肩をすぼめたポーズになってしまった(こればかりは仕方ないよね)。積年の想い、やっとの事で果たせました。この日奇しくも浜田さんが37年前に書いたというナンバーが披露された。37年越しの望みが叶った夜・・・先日務めた司会で紹介したバンドの数は37だったよな。「37」は2025年のラッキーナンバーと言うのはちょっとこじつけかな。
素晴らしい夜になりました。
ハマキンさん、また会いに行きますね!!


日本テレビ「Select LIVE IN JAZZ」
【浜田均グッド・バイブス】1989年1月21日放送
Memory's of You~Avalon
藤家虹二クインテット
Bye Bye EM-CLUB CONCERT
よこすかJAZZ DREAMS The Party's Over より(1987年)
ベニー・グッドマンの十八番といえば言わずもがなの「シング・シング・シング」が最も有名だが、この「アヴァロン」も最高にスリリング!!この曲におけるハマキンさんのソロがもう白眉で、クライマックスの二拍三連になる所がたまりません。カッコいいなあ。


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