風のささやき。
- Ryusaku Chijiwa

- 3 日前
- 読了時間: 3分
2025年10月29日
「ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家」(2024年仏・109分)
(川崎アートセンター)
仕事を終えて大急ぎで電車で移動して、サントラマニアで声優の大先輩、星野充昭さんから「なかなか良かったよ」とお勧めされていたミシェル・ルグランのドキュメンタリー映画をようやく鑑賞するに至った。都心での上映が次々と終了してしまい、ミニシアター系の劇場では日に一度だけの上映だったりする場合が多く(いつ、どこで)というのがなかなか見定められずだったが、この日は急遽決めた鑑賞に奥さんが付き合ってくれた。ルグランの代表作と言えば世間一般的には「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」がまず挙げられるだろうか。ミュージカル音楽の大家と言うイメージを持つ方も多かろうが「ルグラン・ジャズ」という超名盤でジャズファンの認知度も高い。自分のように「栄光のル・マン」「華麗なる賭け」など同じサントラでも純粋な劇伴音楽家としてのイメージが先行する人もこれまた多いだろう。マックィーンの大ファンなので地味な作品ながらも「ハンター」も外せない。さらには007シリーズでも番外編の扱いで評価の低い「ネバーセイ・ネバーアゲイン」が大好きなのでさらに馴染みが深い(限定でリリースされたサントラは長らく再販されることなく入手困難のため、これを先の星野さんに請うてダビングしてもらったことがあった)。遡ればルグランとの出会いは小学二年生の時に劇場で見た手塚治虫原作の実写版「火の鳥」。テーマ音楽の華麗なストリングスが耳から離れず、今なお本編よりも予告編で聴いた記憶が鮮烈に残っている(テーマ以外の曲は深町純)。そう、フランスのエスプリと言うと陳腐な表現だが実に洒落たセンスでメロディは流麗、リズムアレンジは軽快でジャズのエッセンスが随所に感じられる。いわばルグランの音楽は「極上」なのだ。そんな彼のプロフィールについて詳しく知る機会が無いままでいたのだが、今回の映画でその生い立ちから若くして音楽家としての才能を発揮し世界に認知されるに至るまで、苦悩と挫折、晩年の活動の軌跡を一気に見ることが出来た。一言で表すなら、何という満ち足りた時間!豊かな音楽の洪水!まさに極上のエンターテインメントで、後半は涙が出て仕方がなかった。貴重なブルーノート東京での演奏の映像も嬉しく、人生最後の公演となったパリでのコンサートでの映像は胸を打つ。まるで魔法の水に浸っているような時間が愛おしい、稀に見る名作。
※都心での上映は順次終了しているようです。公式サイト他でスケジュールのご確認を!



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