top of page

小林清志さんを悼む。

更新日:2022年8月13日

2022年8月10日


小林清志さんの訃報を聞く。享年89。肺炎でお亡くなりになったが、大往生であろう。言わずもがなの次元大介(ルパン三世)役で知られた大先輩であり、年配の方であれば「荒野の七人」や「大脱走」、「電撃フリント」ほかのジェームズ・コバーンの吹き替えでもお馴染みであった。晩年になってもナレーションの仕事を数多くこなされ、生涯現役を貫いた方であった。奇しくも先日「カリオストロの城」を観たばかり。粋で洒脱で、一匹狼と言う男を演技で、声で体現されていた。そのお声もずいぶんと前から衰えを感じさせるものになってはいたが、最前線で仕事を続けるのだという執念を感じるほどの仕事ぶりだった。自分が現場でご一緒したのはただ一度。「バジリスク 甲賀忍法帖」のアフレコの時、まだ移転前のT&Tスタジオでのことだ。小林さん演ずる甲賀弾正はアニメ版では第一話のみの出演だったと記憶しているが、登場キャラクターが数多い同作にあってその収録に居合わせることが出来たのは幸運だった。第一話のオープニングは自身が演ずる風待将監と夜叉丸との御前試合のシーンで幕を開けるのだ。「銀河鉄道物語」に続く(いわゆる)塩屋組のアニメレギュラーだったが、小林さんのほかに京田尚子さん、大平透さん、若本規夫さん、立木文彦さんと錚々たるキャストが揃う場で絶対に間違いは犯せない――足が震えるほどの緊張感の中でマイクの前に立っていたことを今でも忘れない。大ベテランともなると抜き(別録り)が多いのだが(この時も大平さんが抜き)、他の方々は同録(同時録音)。驚いたのは完全禁煙であるはずのブース内、小林さんの前には灰皿が。リハV(映像)チェックの時に気づいたが単色だったり線画の部分もあった映像は、小林さんの部分だけしっかり色が入っていた。アフレコ創成期から活躍を続ける大御所に対して現場がいかに敬意を示していたかがわかるだろう。エンディング、お幻(京田さん)とのシーンで小林さんの台詞がボールドに合わずに何度もやり直しになってスタジオに緊張感が走ったが、京田さんが「あなた、それ違うわよ」とおっしゃったことで事無きを得たという場面があったのを今も鮮明に記憶している。「ルパン」もキャストはすべて新旧交代していまや別の作品だ。昭和の名残りを感じさせる役者(声優と呼ばれるのを嫌った)が、あばよと言い残して去っていった。その魂をほんのわずかでも後世に伝えていければと願ってやまない。


謹んで哀悼の意を表します。




閲覧数:61回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page