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執筆者の写真Ryusaku Chijiwa

二瓶正也さんを悼む。

更新日:2021年8月28日

2021年8月26日


俳優・二瓶正也(にへい・まさなり)さんが亡くなった。享年80。幅広い世代の人に親しまれてはいるが、今やクラシックのマスターピースとも言える特撮番組「ウルトラマン」でイデ隊員を演じたこと、同じ円谷プロ作品「マイティジャック」の源田明役ほかで広く知られた方であった。イデ隊員はレギュラー陣の中でもコメディリリーフ的な側面はあったが、武器開発担当でありまた誰よりも繊細な部分も持ち合わせたキャラクターだったことで主役のハヤタ隊員に次いで強い印象を残す人物であったのだ。雑誌や映像媒体などで明かされるエピソードからは、一本気である性格もあって現場でスタッフと衝突することもあったことが明かされている(ハヤタ役の黒部進さんは「正義感」と表現)。今年で50周年を迎えるというロングランシリーズにおいて派生作品、劇場版などはもちろん、映像特典の座談会や特撮イベント等々でかつての出演者が登場する機会が多くある中で、二瓶さんのお姿を見るのは稀であったため(俳優としての仕事は一線を退かれていた)、本編におけるイデ隊員のイメージは半ば手つかずで残っているという人は多いのではないだろうか。ウルトラマンの防衛チーム、科学特捜隊のメンバーで故人となっているのは唯一、小林昭二さん(ムラマツ隊長役)だったのだが、まさかイデ隊員が真っ先にキャップに会いに行ってしまうとは思いもしなかった。ファンがイデ隊員を語る時、必ず挙げられるのが「故郷は地球」(23話)と「小さな英雄」(37話)。米ソ宇宙開発競争が華やかなりし頃、科学の発展のために犠牲となった人間が怪獣となって地球へと飛来するが、それを敵として葬り去らねばならぬということに対する逡巡、防衛隊の一員として日夜様々に努力をしても結局最後に怪獣を倒すのはウルトラマンであるということで芽生える依頼心と自身の存在意義に対する疑問――、それぞれに地球の平和を守る完全無敵のヒーローに対して大きな問題提起をするシリーズの中でも特に人気の高いエピソードだ(自分は咄嗟のミスで叱咤を受け、責任を感じて無謀な行動に出るイデ隊員の純粋さが初めて披露される13話「オイルSOS」も加えたい)。「犠牲者はいつもこうだ、文句だけは美しいけれど」「すいませんキャップ、依頼心を捨てて人類の平和の為に頑張ります!」、彼が語るからこそその言葉に意味があり、心に訴えかけてくる重みがあると思うのだ。誰よりもイデが激情家であり、かつヒューマンであったことを改めて思い知らされるようで、見直してみるとホロリと泣けてくる(佐々木守氏、金城哲夫氏の脚本がやはり優れている)。狂言回しに徹した2話「侵略者を撃て」や17話「無限へのパスポート」も良かったね。イデ隊員よ安らかに。二瓶さん、素晴らしい演技をありがとう。



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