2019年10月24日
花椒(ホワチャオ)がしっかり効いた、いわゆる陳麻婆豆腐を初めて食べたのは、赤坂の四川飯店ではなく、陳健一麻婆豆腐店(グランデュオ立川)だった。かれこれ20年近く前のことだろうか。鮮烈な辛さ、そして深みのあるコク、本当に美味い麻婆豆腐との出会いだった。確か新宿にも店舗があって、一時期は足しげく通ったもの。あれから月日は経ち、ここ1、2年前から「麻辣(マーラー)」と冠した食品が山のように発売されている。そのほとんどが、いたずらに花椒を効かせに効かせただけのもので、旨味も深みもあったものではない。やはりここ数年前、購買層がごく限定されているというのにパクチーを使った商品が次から次へとリリースされたのと全く同じ構図だ(結局、多くが半額処分で叩き売りされていた)。売り手が訴求するのは単に話題性だけで、本当に美味しいもの、定番商品として今後も生き残っていくものを作ろうという気概は全くない。これはよろしくない。流行り物というのは、廃れてしまった時に「古臭い、ダサイもの」というレッテルが貼られてしまうことで、すでに市場に出回っていたものでさえ追いやられてしまう懸念がある。
そんな中、このほど吉野家のメニューに登場したのが「麻辣牛鍋膳」だ。ご多聞に漏れず、麻辣という文字が躍っているが、陳健一氏が監修しているという。これはひょっとすると当たりかもしれない、と思い食べに行ってみた。うん、うん、本場の火鍋とはまた違った味わいのものだけど、スープはちゃんと美味しい。牛肉はミスマッチな気がするけど、吉野家なのだから仕方がない。きちんと美味しいものを作る、供する。これ、大事なことだと思う。
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