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消えない記憶。

更新日:3月9日

2024年3月6日


奥さんと食事をしながらとりとめのない昔の話をする中で、幼少の頃に見た劇場用アニメの内容があまりに衝撃的だったというネタがひとつ。それが、やなせたかし原作の「チリンの鈴」。折に触れ思い出すことはあっても再度観返したことはなかったように思う。この作品を映画館で観たのは1978年、自分が9歳(小学3年生)の時だ。確か母に連れられていったように思うが、自ら観たいとせがんだのか・・記憶は定かではない。メインは「親子ねずみの不思議な旅」という長編で、頻繁にテレビCMが流れていたことは憶えているので、興味を抱いての事だったと思う。「チリン‥」は併映の短編作品(46分)だったので、それこそ何の予備知識も期待もなく観ることになったのだが、本編よりもこちらのストーリーの方が鮮烈に脳裏に焼き付いている。トラウマという言葉を簡単に使う昨今の風潮に乗る気はないが、少なくともトラウマ的なものであったことは確かだ。のどかで平和な牧場で優しい母と暮らす子羊のチリン、しかしある日牧場は獰猛な一匹狼のウォーに襲われ、チリンを守ろうとした母羊は絶命してしまう。復讐を誓いウォーの後を追いすがるチリンは、自身も彼のように強くなりたいと思うあまり弟子にしてくれと志願する・・・。本作品は配信サービスで視聴できるので概要はここまでにしておく。45年ぶりに観てみようと勇気を奮ったが、それほどまでの覚悟が要る内容だ。あまりに物悲しく、暗く、そして救いのない結末――。自然界における生命の儚さ、生き抜くことの過酷さと不条理。それら壮大なテーマを内包していると判っていても、観ていてとても辛いのだ。松島みのり(チリン)、中西妙子(チリンの母―「キャンディ・キャンディ」の組み合わせだ!)、神谷明(成長したチリン)、加藤精三(ウォー)といった一流の声優陣、そして作画の素晴らしさが観る者に一層訴えるのだ。


♬チリンの 鈴で 思い出す・・・


劇中で繰り返し流れるこの挿入歌(ダーク・ダックスかデューク・エイセスだと記憶していたがブラザース・フォーだった)は、当時聴いただけなのにいまだにメロディラインを覚えているほど。こうした硬派な作品は今のマーケットにはそぐわないであろうし、何より現在活躍中の若手声優では作品に豊かで重厚な表現を加えることは無理だろう。何気なく大昔の記憶の答え合わせをしただけだったが「時代が変わったのだ」ということを図らずも痛感する結果になった。声優業界も大きく変わってしまった。そこに自分の居場所は無いようだ。

時代は、変わったのだ。


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