感謝のココロ。

2020年6月30日


先日、中学時代の恩師からの依頼を受けて、声優を目指してレッスンを受けている高校生に個人的なアドバイスをするという場を持った。周囲はそれほど期待出来ないのではといった見方をしているようだったが、誰にだって等しくチャンスはあるもの、若さというのはあらゆる可能性を秘めているのだ。一体どんな人物だろうかという自身の好奇心もあって対面をしたが、ごくごく大人しく、個人の主義主張や熱い思いがあまり見えてこない、言うなれば今風の青年だった。最終的には本人の資質、やる気が鍵になるのだけど、ともかくも、自分の拙い経験談や考え方を縷々と述べてきた。その中で、コミュニケーションの大切さを説きつつも、自分の過去の失敗談として「多忙をきわめたジュニア時代、もっと相手の懐に飛び込むような積極的な交流をしなかったこと」を、自戒の念を込めて話した。収録後に出演者同士で食事に行ったり飲みに行ったりという機会は少なくなかったけれど、見知った顔の人が居ない、比較的年齢層が高くベテラン勢が多い現場では、誰とも話さず、独りきりでいることが多かった。まだ駆け出しのジュニアであること、また余計なことをして先輩にドヤされやしないかという心配もあって、自分はつとめて、つとめて大人しくしていたのだった。外画シリーズの「ギャラクティカ」や「プリズン・ブレイク」、「時空刑事1973 ライフ・オン・マース」といった、朝10にスタジオ入りしたのちに昼休憩を挟み夕方まで拘束される現場で、自分はアフレコブースの端に息を殺して座り、スタッフ、キャストがめいめい食事に出掛ける際も、「ご一緒していいですか!?」の一言がどうしても言えなかった。今から考えると、何と勿体ないことをしたのだろうと悔やむばかりだ。こういったことは、出来る限り繰り返さないようにしようと思い至っているけれど、そう上手く行くものではないね。

最近、レギュラーの収録で大好きな大御所の方と業界の大先輩と久しぶりにご一緒して、わずかばかりながら言葉を交わすタイミングがあった。お二人ともにこやかに、気さくに接してくれたのが本当に嬉しく、何と有り難いことだろうかとしみじみ思った。自分は顔が広くないのだという引け目があるのだけど、もうこの年齢で遠慮などをしていてはダメなんだ。

積極的に、相手の懐に飛び込んでいく。過ぎた時間は二度と取り戻せないのだから―――。