2023年3月11日
清々しい朝、澄んだ空のもとにその姿を現した富士の山。やはり富士はいいね。よくやっているよ――霊峰富士を仰ぎ見る時、僕は大好きな太宰治の「富嶽百景」をいつも思い出す。
高校生の時に教科書に載っていて授業で習ったものだが、この淡々とした描写でありながらどこか寂し気で私小説然とした文体に強く惹かれた。何気ない日常を映し取りながら、苦悩し、煩悶し、しかし鼻持ちならぬデカダンな作者の性格も窺い知れるところが不思議と快く感じられたのだ。人生で最も楽しい時期だという思いを強く持っていた中学時代から一転、スパルタ式の私立高校で心を許し合える友人もなく、常に下を向いて歩くような日々を送ることになって孤独で寂しかった自分に、太宰の短編は寄り添ってくれるような気がした。校外でバンド活動をしたり文化祭で反体制の自主製作映画を撮ったりと自分なりに高校生活を乗り切っていたつもりでも、己の陰鬱とした影の部分が芽吹いてしまった。あれから三十数年の歳月を経て富士の峰と対峙する自分は、心から晴れやかな気分だ。ありがたいことだ。
今回は全くのノープラン、車でホテルへ行ってそのまま帰って来ようとさえ考えていたのだけれど、件の友達が御殿場方面の話を振ってくれたのでアウトレットモールへ行くことに。
病気になってまだ間もない母に、ハンドバッグをプレゼントしようと考えてここを訪れたのはもう10年ほど前になるのかな。結局、それを持って出掛けてくれることはなかったけれど・・モールの店舗は結構入れ替わっていて、施設は一段と綺麗になって様々な部分が拡充されているようだった。買い物する気はなかったのに、奥さんにつられてついつい一枚だけスウェットを購入。まあ、これも小旅行の記念だね。お昼はフードコートで軽めのものを。
その足で友達が薦めてくれた和菓子処の「とらや工房」へ行くことに。恥ずかしながら前知識は全くなし。2007年竣工の東山の店舗は旧・岸信介邸に隣接するところ。竹林の中にあって何とも趣がある。散策路があって、美しい自然の景観も楽しめる。これは好いねえ。
季節物の桜餅は残念ながら売り切れ。味噌まんじゅうと白大豆のどら焼きを煎茶とともに。
澄んだ空気、豊かな自然の中で暖かい陽射しを受けながら過ごす、何とも優雅な時間です。お茶はおかわり自由、人気があって混雑していたけれど、平日にゆっくり来るのもいいね。
せっかくなので隣接する旧・岸邸を見学(入館料300円)。伝統的な数寄屋造りでありながら近代的な工法が取り入れられ、トラディショナルかつモダンな佇まい。邸内から眺める中庭は一枚の大きな絵画を見るよう。華美に走らず、意外なほどにシンプルな造りに驚き。
見学には要所でボランティアスタッフさんの解説があり、感心しながらゆっくりと拝観して回りました。これは穴場だね。暖かい季節に訪れることをお勧めします。また来たいなあ。
ゆっくりと骨休めして、明日からまた前を向いて日々を生きていきます。休息は大事だね。
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