2021年5月20日
「タモリ3 ―戦後日本歌謡史―」(TAMORI-3 アルファ)
1981年9月にリリースされた、知る人ぞ知るタモリのサード・アルバム。タモリさんが現在のような国民的タレントとしてではなく、風変わりなイロモノ芸人(本人曰く「素人に毛が生えたような」)としてのみ一般に認知されていた頃。中洲産業大学の森田一義教授、もしくはイグアナ芸に代表される人だったのだ。赤塚不二夫に見いだされ、構成作家や演劇人、ジャズミュージシャンなどとともに「面白グループ」のメンバーでもあった。自分は彼がDJを務めた「オールナイト・ニッポン」の初期を何度か聞いたことがあるが、女子大生を侍らせながら下ネタを連発するといった芸風は好きになれなかった(YMOがゲストの時も酷かったなぁ)。ただ、「笑っていいとも!」出演によってお茶の間の顔として知られるようになって以降、あらるゆ事物に対する知識と造詣の深さやその人物像を知るところとなってからは氏に対する印象は大きく変わった。ただし、氏の本来の持ち味は「いいとも!」ではなく「タモリ倶楽部」なのだと頑なに信じていた(1990年代のタモリ倶楽部はまだまだローカル色が強かった)。自らもトランペットを演奏していたほど音楽の素養もあり、放送禁止ギリギリのネタさえも厭わなかった若き日の頃(と言っても30代中盤)の異色作が今作だ。歌謡曲、唱歌などあらゆる名曲をパロディーにしているために著作権上の問題も指摘され、3万5千枚の初回プレス分を売ったところで即刻廃盤となったもの。一時は中古レコード店でかなりの高値が付けられていた時代もあったが、YouTube時代になってからはこの音源もあちこちにアップされるようになった(現在でも未ソフト化)。自分は兄が所持していたカセットテープをダビングして長らく親しんでいるので元ネタとパロディともども知るところですっかりお馴染みだが、今の若い人にはどのように感ぜられるのだろう?ただ単に「さすがは芸達者だ」「タモさんらしい」といったコメントを付けられるとすればそれはちょっと違うと思う。これは作詞を担当した高平哲郎氏、アルファレコードの名プロデューサー宮住俊介氏をはじめ編曲・歌詞を担当した鈴木(コルゲン)宏昌氏などが仕掛けた、アナーキーでかつ非常に毒のある笑い。今聴くと笑いのセンスは古びたものかも知れないが実に丁寧に時間をかけてレコーディングされているのがよくわかる(芸が細かいのだ!)。
これは過去、個人的にMP3化してiTunesに取り込んで楽しんできたが、機種変やらPCの乗り換えの際にファイルごと消えてしまうという憂き目に遭ってきた(時々あるよね?)。なので今回思い立ってファイル化するのは三度目。曲数が多いから、えらく大変なのだよ!
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