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執筆者の写真Ryusaku Chijiwa

ウルトラクイズ賛歌――宗田ブッチャーよ永遠に。

2021年2月8日


テレビのバラエティ番組を夢中になって見るということがほぼ無くなってしまって久しい。お笑い系の特番などを時折見ることはあっても「これだけは見逃さない」というプログラムは年末の「笑ってはいけない」シリーズぐらいのものか(それさえも録画は飛び飛びに観て半分以上はそのままというのが実際だ)。メディアが成熟し切ってしまい、娯楽も多様化をした今日、一概にテレビがつまらなくなったと言い切ってしまうのも酷だし、昔のテレビは面白かったと連呼しても回顧主義おじさんの戯れ言だと冷ややかな視線を浴びるだけの事。ちぢぃーが10代、20代の頃のバラエティ番組と言えば、良くも悪くも「いい加減」なものが多かった。コンプライアンス云々などという言葉もなく、現在のような制約を受けることも少なかった時代。「天才・たけしの元気が出るテレビ」や「浅草橋ヤング洋品店」などを手掛けタブー無視の笑いをお茶の間に届けたテリー伊藤氏や「シャボン玉ホリデー」に始まり、「11PM」や「タモリ倶楽部」などのサブカル的なものからキッチュなネタまで扱った故・景山民夫氏、「超能力者ユリ・ゲラー」「オリバー君来日」」、「木曜スペシャル」枠でのUFO特集などオカルト物の企画で話題を振りまいた矢追純一氏などのディレクターが奇抜で風変わりな番組を次々とお茶の間に届け、視聴者はテレビに釘付けになったのだ。自分がまだまだ幼かった頃、思えば「引田天功の大脱出」の特番や水曜スペシャルの「川口浩探検シリーズ」、「元祖どっきりカメラ」や「スターどっきり㊙報告」のほか、織田無道や宜保愛子などの霊能力者モノや、「カメラが捉えた決定的瞬間」シリーズなどの衝撃映像など、真偽不明のオカルト物から品性下劣なエログロ系のキワモノと、ありとあらゆる内容の番組が当たり前のように放送されていたのだ。今日の放送作品と一概に比べられるものではない(多くの制約の中でより洗練され、より創意工夫が凝らされているとも言える)。

だがしかし、本当に面白いものは長い年月を経てもその面白さは不変のものである。このブログでも折に触れ取り上げてきた、自分が最も影響を受けたテレビ番組は、1977年から1992年まで(1998年に単発での放送あり)、日本テレビ系列で年に一度のスペシャル番組として放映されていた「アメリカ横断ウルトラクイズ」だ。ちぢぃーがこの番組を最初に見たのが1978年の第2回の三週目のみ(放送は全三回)で、クイズの優勝者がニューヨークの超豪華ホテルに家族を呼んで一泊するという賞品はそれまでのクイズ番組の概念を打ち破るものでとにかく驚いたし、翌年に見た第3回大会は出場者の個性豊かなキャラクター、構成の見事さ、福留功男さんの司会進行とナレーションの巧みさにすっかり魅了されてしまい、優勝したブッチャーこと宗田利八郎さんにはファンレターを送ったほどだった(ちぢぃーは当時小学4年生)。同世代であれば同じようなウルトラクイズファンは多いし、番組の面白さは過去に何度も書いてきたので割愛するが、とにかくこのスケール、この人間ドラマ、この面白さは称賛に値する。どの大会も楽しいが、やっぱり一番思い入れがあるのが第3回。当時カセットテープに録音した音声を何度も繰り返し聴いてすべて記憶してしまうくらい。再放送などないのでただただ貴重な記録、MDにダビングをして、さらにそれをMP3化して今に至るまで大事に持ってきた。その思い入れのある第3回の映像がYouTubeに!!これまでわずかに断片的にアップされてはいたけど、これほど良好な画質で見るのはなんとなんと41年ぶりの事!!!あぁ、ブッチャーは、浪人は、高山くんは、篠やんはこんな表情をしていたんだ・・!福島県東白川郡棚倉町の造り酒屋(福賑榮=ふくにぎわい)の若旦那であった宗田さんも2年前(2019年1月)に69歳で惜しくも逝去されたし(蔵元は平成27年に廃業)早稲田大学の後輩で大会のマスコットガール的存在だった宮村千春さんもかなり以前に早世されていると聞く。優勝賞品の競走馬に「サウザント・プランタン=千春号」と名付けるほどブッチャーのお気に入りだった千春ちゃん、スタジオ収録の際の二人の雰囲気がこんなにも良かったんだなと思うとぐっと胸に迫るものがある。ブッチャーは結局別の方と結婚したけれど、天国で再会を果たした二人が昔話に花を咲かせているのかなと思ってしまう。古き良き時代の、予算と時間をかけたテレビ番組。いかにもオーバーな演出(罰ゲームや最後の草競馬の実況など)も昭和の空気感を伝えるものとして実に良いスパイスとなっている。これこそが娯楽番組、これこそがバラエティ。この精神を受け継ぐような番組をもう一度見たいと思うし、現在のテレビ番組制作にぜひとも生かして欲しいと願ってやまない。


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