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執筆者の写真Ryusaku Chijiwa

あなたと夜と、エヴァンスと。

更新日:2019年5月29日

2019年5月26日


ビル・エヴァンスのドキュメンタリー映画「タイム・リメンバード」をアップリンク渋谷で鑑賞。初めて訪れた劇場・・・というよりは小さな休憩室のような狭いスペースで、椅子もニーチェアを並べたもので驚き。常時空調?の音が大きく鳴り止まないのが残念だったが、映画は実に興味深い内容だった。カット割りが細かく場面の切り替わりも早いのでちょっと観辛い部分はあったものの、全編、好きなエヴァンスの音楽とともに彼の生涯を追っていくのは単純に楽しかった。かつてラズウェル細木さんのジャズコミックでもネタにされていたヒトシ・ナメカタ(行方均)さんが字幕監修だったり、パンフレットでは後藤雅洋さん(ジャズ喫茶・四谷「いーぐる」店主)が解説を執筆していたり、この作品を公開するにあたりファッション先行の話題作に仕立てなかったところが潔い(まあ、拡大公開は望むべくもないのだろうが)。内容も硬派で、実に多くの関係者の証言を集めている。クラシックの素養を基盤にした緻密で繊細なジャズピアノ、スコット・ラファロの不慮の事故、常にドラッグがつきまとった演奏活動、奔放な女性遍歴、彼の経歴を知る上でこれまで幾度も聞いてきたエピソードの数々を仔細に知ることはある種の恐怖でもあり、どこか身構えてスクリーンと対峙したのだけれど、想像していたような暗く陰惨な、目を覆うばかりの・・といった形容をされるような悲劇的な場面は最後まで現れなかった。天才と語り継がれる人の栄光の陰に酒や女の話はつきものとは思わないが、バド・パウエルやジャコ・パストリアスに比べればまだまだ健康的(?)ではないか、と胸をなでおろした次第。 何よりも、彼が「どんなことがあっても音楽を捨てなかった」というのが嬉しいし、破滅的な生涯を閉じた幾多のミュージシャンの(とかく、語られがちな)悲哀のストーリーとエヴァンスの生き方は趣を異にするものだ。親族やミュージシャンたちの貴重なコメントを見ることが出来たが、多くの人々が鬼籍に入っている。よくぞ取材をしてくれたと感謝せずにはいられない。ジャズには詳しくないけれど、エヴァンスだけは好きで良かった。実はこの日18時の回を狙って行くと満席で、日を改めようと帰りかけたんだけど、思い直して20時半の回を観たのだった。帰らなくて良かったな。しかし、トニー・ベネットは喋っているだけでもカッコいいんだなあ。


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